次の活動実施予告・実施済の報告


◎2024年度もつくし野ビオトーププロジェクトを実施します。
〇第1回定例活動は4月20日土専用畑で年間プログラムの発表や新キャベツと「?」の収穫体験などです。希望者にカブトムシの幼虫配布もします。
〇 第1回特別活動は、実施日・内容ともに未定です。

2016/03/12

活動報告 2015年度 第12回 「大学の先生にいきもののお話を聞こう! ~キンギョはなぜ海がきらい?」


文:小池さん
写真:平嶋さん、井上さん、岡本さん、小池さん



3月12日(土)に活動歴10年目最後を飾る本年度定例12回目(特別活動6回を合わせると18回目)の活動を実施しましたので活動報告をします。(小池常雄)


《2015年度第12回定例活動報告》

本年度は、この活動が2005年5月に始まって10年目の記念すべき年。何か記念となる、例年とは異なった企画が出来ないかと、年度最初のころは考えていました。

しかし、11月と2月に私にとっては大きな出来事があり、オリジナルの企画を立案するには、余裕がなくなってしまいました。

そんな時、以前、個人的な友人で、奥様を合わせると2度ほどこの活動に来てくださり、とくに2012年の「大学の先生に、最新の生命科学のお話を聞こう」にも来ていただいた東京大学大学院農学生命科学研究科(農学部) 金子豊二先生に再度の来校をお願いしたところ、快くお引き受けいただけることになり、この日の活動となりました。




12時半から会場の準備を始めました。参加者が多いことが予想されたので、いつもとは違う机の並べ方にしました。

南つくし野小蝶プロジェクトからお借りしてきた顕微鏡と投影装置、つくし野ビオトーププロジェクトで所有している顕微鏡と投影装置(下記写真)、拡大鏡装置などの準備を進めていました。



実はこれに先立つ朝の9時、金子先生から指示を受けていたマダイをさがして、つきみ野の魚屋さんに遠征。中央に写る、長崎産天然マダイ君を購入。氷漬けにして、午後の活動を待ちました。




この日は、寒かったものの、晴天に恵まれた活動日和となりました。いつものように、三々五々、参加家族が集まってきてくれました。

先ず初めに、私から、今日のプログラムの説明と金子豊二先生のご紹介をしました。

金子先生は、東京大学大学院農学生命科学研究科で主にお魚の研究をしておられます。この日は、最近出版された中学生程度向けのご本をベースに、先生のご研究のお話しなどをしていただくことにしました。簡単に、先生の略歴や研究室のことを紹介したプリントを作り、これも説明しました。




金子先生のお話しは、東京大学農学部の紹介から始まりました。

なんとなく、農学部というと農業のことを研究しているところのような気がしていましたが、お聞きしてびっくり。生命に関わるほとんどすべてのことを学問の対象としているような学部です。

生命に関わる学問は、新しい大学では、最近はどこも「農」という漢字は使わず、生命科学とか、ライフサイエンスとか、バイオ何とかという名前を付けている学部が多いのですが、さすがに日本で一番歴史のある大学。「農」の字に誇りをもって名のり続けています。

東京大学の敷地は、日本国土の0.1%、つまり1000分の一を占めているのだそうです。北海道に広い演習林があるそうです。それにしても、広い!

東大でも新しく推薦入試の制度が始まり、高校生のうちに秀でた活動をしてきた人は推薦入試で受け入れる…という制度が出来たので、ねらい目だよ!…なんて言うお話しもありました。





「魚ってなんだろう」というテーマで、先生のおはなしの本題に入りました。

さかなは、大きく分けてアゴのない物とあるものがあるのだそうです。アゴのないヤツメウナギのキバだらけ怖い口の写真を見せていただけました。食べ物に吸い付いて、吸い込むように食べるのだそうです。吸い付かれたドジョウがかわいそう!

アゴを持つ種類が出て、魚たちは大きく進化した、アゴのないライオンが居たら、ちっともこわくないネ?なんていうお話しもあり、皆がにこにこして聞いていました。





「ウナギ」のおはなしも出ました。東大は、日本ウナギの産卵場所を最近突き止めたことで有名です。とても遠い西マリアナ海嶺のあたりで、卵を産んで、あまり泳げない赤ちゃんが黒潮に乗って日本に帰ってくるのだそうです。

先生は、人工的にこの赤ちゃんウナギを大きく育てる研究もしておられるのだそうで、サメの卵がエサに良いことがわかったのだそうです。この研究が進めば、ウナギの完全養殖が出来るようになり、もっと安くたくさん鰻丼が食べられるかもしれないのだそうです。
これはとても楽しみです。





次は「タイのウロコのおはなし」でした。

ウロコの役割のお話がありました。魚は、ウロコのおかげで脱皮しなくても大きくなれるから、ザリガニやエビの方がとても大変!…というお話もありました。



ここで、私が今朝買ってきたマダイの登場です。長崎産の天然物。

ウロコを数枚、参加者自らはがして、観察して絵を書くことになりました。魚のウロコを初めてはがす子供たちも多かったのでは?



みんな興味津々で、ピンセットで、お腹のあたりの大きなウロコや、側線(そくせん)のついたウロコを狙ってはがしている子もいます。





黒い紙を用意しておいたので、その上で観察です。ウロコを顕微鏡で拡大表示するとこんな感じでした。



ウロコのスケッチはこんな感じです。





「魚の浸透圧」という、先生の専門の研究内容のお話しも伺いました。この日のテーマの「キンギョはなぜ海がきらい?」…というお話です。

魚には色々な種類があるけれど、海の魚のある種のものは、1/4くらいに海水を薄めたものの中でも元気に生きられるのだそうです。

この塩分濃度だと、淡水の生物のキンギョ(金魚)も生きられ、不思議なことに海と川・池の魚を同じ水槽で飼うことが出来るのだそうです。

この方法をうまく利用すると、海の生物のフグを陸地の温泉の近くで簡単に飼うことが出来、暖かい温泉の中で育つので年がら年中、エサをよく食べて、早く大きくなり、養殖にはとても良いことが先生の研究で明らかになったのだそうです。この方法で育てたフグは、毒がなく、安定して出荷できるのだそうです。






お話しの最後に、前回好評だった「お魚クイズ」が登場。

前回は3問だけで、もっとやりたかったという声が多かったので、今回は事前に先生にお願いして、大幅増量(今回は9問!!)しての再登場となりました。

キンギョには胃はあるのか?胃が変化したものはなにか?魚の縦じま横縞はどっち?タイの鼻の孔はいくつ?・・・なんていう、子供たちにもわかり易いクイズがいくつも出題され、盛り上がりました。




最後に参加者から質問を受けましたが、ほとんど大人(保護者の皆さん)からのものばかり。関心の深さが伺えました。

「ウナギはいつになったら、安くたべられますか?」という質問には、

「2年後かも10年後かもしれない。研究には、ブレークスルー(急に研究の糸口が見いだせること)が起こることがあり、それが起きれば、意外にはやくウナギの完全養殖が成功するかもしれない。」

という、お答えが記憶に残ります。





先生のお話しは、終始、ユーモアたっぷりでとても面白いものでした。

それでも、休みを入れない2時間以上の長いお話しで、難しい部分もあったので、子供たちは退屈するのではないか?と、とても心配していたのですが、それも要らぬ心配となりました。

ほぼすべての子供たちが、最後まで先生のお話を熱心に聴いていたのが、とても印象に残ります。先生の真ん前に移動して、「僕はここで聞く」といった男の子がいて、とてもうれしく思いました。


それから、実は…奥様の金子・大谷律子先生も来て下さり、ずっと参加していて下さいましたが、参加者の皆さんにご紹介するのを忘れてしまいました。ごめんなさい!

律子先生は今、東洋大学生命科学部学部長。生命科学科の教授。豊二先生同様、第一線の科学者です。以前、この活動で講師として来てくださったこともあります。

今度は、律子先生のお話も聞きたいと思いますが、とてもお忙しいので、厳しいかな?




なお、観察で使ったマダイは、後で私がさばいて先生に差し上げました。

翌日、ご自宅で「ムニエルにしておいしく食べました。」…とのご連絡を頂きました。先生は、研究するのも食べるのも、お魚が大好きなのだそうです。



本年度の活動の最後に、2月22日に亡くなられた、故田村健治元校長先生をしのぶビデオ(井上さん制作)を皆で見ました。

私にとってはつらい映像でしたが、子供たちと一緒に遊んでいる10年前からの田村先生の笑顔がたくさん写っていました。(後日、このビデオは、DVDとブルーレイに焼き、ご遺族にもお贈りしました。)

「ビオトーププロジェクト一同」として、先生のご葬儀にお送りした供花の写真などもご紹介しました。

「ビオトーププロジェクト一同」として、お送りした弔電の文面をここにご紹介します。私が作った文章ですが、田村先生を知る皆さんも同じお気持ちと思います。なお、ご葬儀の中でも、この文章を読み上げていただけた…とのことでした。

「田村健治先生のご逝去の報に接し、悲しみに耐えません。
先生が創設されたつくし野ビオトーププロジェクトは、既に10年の歴史を持ち、のべ参加者数は7000名を数えます。
私たちは、先生の笑顔と沢山の教えに導かれてきました。
どうもありがとうございました。
心より、ご冥福をお祈り申し上げます。
つくし野ビオトーププロジェクト一同 」





金子先生から今日のお話しの記念に、先生のご本を1冊いただきました。この本をもらえる人を、平等にあみだくじで決めました。その結果、今春新1年生になる、MM君が当選。金子先生から直接手渡していただきました。

大きくならないと、まだちょっとむつかしい本だけれど、絵はきれいだから今でも楽しめるかも・・・。中身が分かるようになるまで、しっかり勉強して、大切にしてね!





最後に集合写真を撮りました。




そして最後の最後に、日本農学賞を受賞!!(授賞式は4月5日だそうです。)された金子豊二先生にサプライズで花束をプレゼント!

(実は、事前に用意し、準備室に隠しておいたのですが、いろいろな対応をしていて、すっかり忘れそうになり、あわてました。)

プレゼンターは、HMちゃんにお願いしました。「せんせいおめでとうございます!」という言葉に、先生はとても喜んでくださいました。





皆で作った、シール式のお礼の寄せ書きは、皆さんが帰った後、こんな形にして先生にプレゼントしました。

先生は喜んでくださり、熱心に読んでおられましたよ!シールに印刷された、小さな絵は、この日のお話しのキンギョだったことに気が付きましたか?



当日集めたアンケートは、全て好意的な物ばかり。全てを先生にデータでお届けしました。この内容は、別のブログでご紹介します。




今回の参加者数は、
未就学児:5名、1年生:3名、2年生:3名、3年生:2名、4年生:1名、5年生:0名、6年生:0名、中学生1名、高校生0名、保護者:12名で、参加は11家族でした。卒業生の保護者2名や企業や元研究者など一般参加者3名が参加したことも、今回の特徴でした。

運営側として、特別講師、顧問他10名(金子ご夫妻、樋村夫妻、井上、高見、船崎ご夫妻、平嶋、小池)、取材者:1名(スクール・アメニティ:岡本さん)でした。

子どもの合計:15名、大人の合計:26名の総合計41名でした。運営側も含めて、子供の倍ほど大人がいた活動になりました。

参加校は、つくし野小以外は、南つくし野小、つくし野幼稚園でした。




この活動は、つくし野の街(を中心とした地区)に育つ子どもたちが、子供たちの時間にこそ経験すべき様々な体験活動を、小学校や幼稚園の公的活動では実施しにくい内容を優先し、特に環境学習の視点を重視しつつ企画し、実施しています。

主催者は公的助成から一切の個人報酬を受けていません。勤務先からも一切の補助・評価も受けていません。公的助成の一部で活動保険を掛けた上、常識的な考え方で、安全安心な活動の実現に努めています。いたずらに参加者を多く募るようなこともしていません。

この考えは故田村健治元校長先生が活動を創設された10年前から一切ぶれておらず、今後も変わりません。

参加して下さった皆さん、ありがとうございました。準備や活動を支えて下さった皆さんへの感謝の気持ちを忘れずに!

金子先生ご夫妻を筆頭に、ご支援いただいた皆様、ありがとうございました。


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