羽化に失敗するトンボたち
今年は天候のせいか、トンボの羽化は当たり年。うまく羽化する個体が多いです。
ある程度、環境さえ整えてやれば、多くのトンボの羽化が観察できた年でした。しかし…
もう20年間以上、玄関先のミニビオトープを観察していると、トンボたちの羽化の成功率は、そんなに高いものではないことがわかります。プールから救出してきたヤゴの羽化率は、年によっても大きな変化があります。
水中にいたまま死んでしまうものも相当数います。
羽化のための小枝を登っても、その先にまだ試練。
体をうまくヤゴのカラから体を引っ張り出せたとしても、次の大仕事は、縮んでいる翅4枚を広げなくてはなりません…。
これは体の中から羽化液と呼ばれる体液を翅の中にある細い管に送り込まなくてはならないのだけれど、どうやらこれが彼らには大変な事らしく…。
この写真は、4枚のうち3枚はうまく広げられたものの、残り1枚がうまく広げられなかった個体。
理由はわかりません。何か、ほんのちょっとした事が原因なのでしょうが…。
この状態で翅が固まってしまうと、もううまく飛び立てません。
下の個体、羽化途中の写真のように見えるけれど、とうにこと切れて居る。
おそらく、小枝の頂まで登り切り、上半身はうまく引き出せたのだけれど、下半身が引っかかってうまく抜けなかったのだろうか?
翅もしっぽもうまく伸ばせず、そのまま息絶えてしまった。
羽先が黒いことから、ノシメトンボとわかります。ノシメとは熨斗目と書きます。
室内で羽化したことが原因ではないでしょう。
風はなく屋外よりかえって条件はいいはず。
こちらは、我が家のミニビオトープで、羽化に失敗した個体。水の中に落ちてしまっています。ノシメトンボですね。
つらい写真ですが、これもまた自然界の厳しいおきてでもあります。
Kさんにいただいた写真。この写真だと、無事羽化できたのか…と、思ったけれど…。
待ちに待ってようやく羽化したと思ったら、落ちて、翅が1枚折れてしまったそうで。。。他の羽根や体は大丈夫なのに、もうこうなっては、飛べない。
以下の2枚は、昨年の物。2枚とも、CSさんにいただいたもの。
一方で、以下の写真は、1本の小枝の同じ場所に違う日に羽化したヌケガラ。
なにか3匹がそろって、手と手を(足と足?)取り合って、羽化した後のように見える。
6月25日夜に撮影したアカトンボ。こちらはうまく翅を広げられた個体。
目の上下で色が違うこと、ヤゴは抱え込むようにガマの葉を抱え込んで体を固定していることが分かります。
羽化に適した適切な大きさで、這い上がることができ、滑らないように体を安定させ、固定できる細長い葉や小枝が必要なことがよくわかります。
アカトンボやヤンマの羽化のシーズンは、そろそろ終わり。
こんな、羽化に失敗したかわいそうな姿のトンボたちは、図鑑などで紹介されることはありません。
でも実際に、よくよく観察したり、飼育してみると、思いのほか羽化に失敗する個体もまた多いのです。
それだけ、無事羽化に成功した個体は、幸運で、美しく輝いて見えるのですが…。
ある意味ヒトも同じ。
命として今あるのは、奇跡の奇跡の繰り返しの結果なのだけれど、なかなか気が付かないで、当たり前のように日々を過ごしている…。
一匹でも多くのヤゴが羽化に成功して、つくし野の空に飛び立っていくことを願っています。
以上です。
文章:小池常雄
写真:Kさん、CSさん、小池常雄
ブログ編集:同
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