次の活動実施予告・実施済の報告


◎2024年度もつくし野ビオトーププロジェクトを実施します。
〇第2回定例活動は5月11日土と予告していましたが、サツマイモ苗入手の都合で5月19日日専用畑で実施に変更します。
〇 第1回特別活動は、5月5日日こどもの日午後実施します。

2022/04/14

ヒトが作った生き物:カイコ(幼虫の写真を含みます)

 「この子の幸せは?」 
絹を採るカイコ。繭から羽化したばかりの成虫。
いつも活動に来てくれる中1のASさんが、学校でカイコを飼いたいと先生に相談。昨年11月に松本の高原者という専門業者へ友人と二人で注文したカイコの飼育セットが、1月末に保温された宅配便で自宅に到着。
段ボールの箱の裏側に張り付けてある袋は、保温用のホッカイロかな??
ホッカイロは鉄粉を酸化させて発熱させる原理だから、酸欠にならないか?とよけいなことを心配。
段ボールの気積が大きいから大丈夫ということかとも…。
到着した時点で3齢。(ちなみにカイコは5齢まで…)
この時期では、エサとなる桑の葉は、どうするのだろうか?…と思っていたら、写真上部の黒っぽいソーセージ状の固形物がエサ(人工飼料)なのだそうで…。
飼育に至ったいきさつをSママに確認すると、以下の説明が送られてきました。
(小池の責任で複数のLINEの文章を統合し、調整、加筆)
「(一連の飼育活動は学校の)理科クラブでの活動ではありません。生き物好きのお友達と、
「小学生のときに蚕育てたよね…」
という話になったことがきっかけだったそうです。
《また育てたいね➡育てるというか、実験してみたいね➡どんなことができるかな?調べてみよう➡体表に色を塗ると繭の糸色に反映されるらしいよ➡食べ物の色でも反映されるのかな?》…みたいな流れで・・・。」

(小池注:…おお!「観察して」➡「仮説を立て」➡「実験して」➡「検証する」
…これってまさに科学!の考え方)

「そんな事を、休み時間に生物の先生に話したら、その先生の大学時代研究室(の指導)教授の専門が「蚕だった!」とお話してくださり!
それで(思いついたのが真冬の)シーズンオフでも(カイコの幼虫などを)購入できる業者さんを教えてくれたそうです。
温度管理が必要とわかり、先生と話していたところ、
「2人で交代で家で育てるのもいいけれど、理科室なら生き物がいるので24時間26度℃で設定してあるよ…。」と言っていただけて…。
学校がある月曜日から土曜日は理科室、日曜日は交代で家に持ち帰って育てることになりました。
ところがいざ蚕が届いた1月末、コロナ第6波により自宅学習となったため、2人で4日交代とかでおうちで育てる時期もあり…。
夜間もエアコンをつけてあげようとか、移動中はカイロをつけてやろうかとか、気を使っていました(笑
業者から届いたときは、ダンボールで厳重に包まれた上カイロか貼ってありました!
(上の写真)
全部で23匹の幼虫が届いたので
(小池注:多分20匹保証のため、途中で死んでしまう恐れに対応して、
数匹余分にいれてあったのでは??)
(蛹になった後)冷凍させ糸を取る個体と、卵をうませる個体に分けたようです。
「試験休み中、卵をうませる用の個体を5匹ずつ2人で持ち帰り、
様子をみていたところちょうど羽化した」

…というのが、お送りし(このブログで紹介し)た写真です!
ちなみにお友達の方の幼虫も羽化したそうで、
今は羽化した子たちは理科室にて暮らしています。
(23匹届いた幼虫の内)16匹が羽化。
羽化させない様に繭を冷凍用に持ち帰ったのは、本人が5個、友達2個。

そろそろ(羽化してからは飲まず食わず…なので10日程と言われている)寿命が来てしまう頃と思うのですが、卵はどうなったのか、確認しますね!
着色材混入の実験用エサによって、パックで分けてエサを与えている様子。
色付きの幼虫は、油性ペンで体表に着色したものだそうで…。
実験用に加えた食用色素の色味によって、繭への着色の度合いが異なったそうです。
それで(食紅の表記されていた)成分表をみたら、難消化性デキストリンの比率がちがう…と発見。
これが原因ではないかと、仮説をたてて、次世代の実験を計画してるんです!
これまでに(幼虫が成長過程で)排出した全部の糞を保存していて(びっくりですよね!)、その色味の度合いもちがう!
そうしたら、理科主任の先生が、
「薄層クロマトグラフィーで分析してみればよい」とおしえてくださって…。
(最初の写真、飼育セットの)お取寄せ費用は、(幼虫)20匹と人工飼料で2000円と少しでした。
完全受注生産らしく、12月初めにに申し込んで、1月末に届きました。
取り寄せ費用は、友達と2人でお小遣いから出し合って購入していました。
次世代用の人工飼料は、先生が購入してくださっているそうです
「食紅を混ぜた人工飼料をたべた子も、体表面に油性ペンで色付けした子も、色つき繭になったそうです。
食紅グループの蚕、4色実験したそうなのですが、(食紅の)色によって(繭の)濃さが違って、なぜだろうって食紅の成分を調べたら…。
難消化性デキストリン
(注:いも類やとうもろこしのデンプンを分解(低分子化)したもの。食品添加物ではなく食品に分類。目的は多様。適度な粘度を与える、食材の分離を防ぐ、凍結乾燥食品の形を保つ、粉末食品をサラサラに保つなどの用途。おなかに入っても分解されにくく、消化されにくい。)
が含まれている量が色によって違って、(色の濃さの)量に比例してると発見。
次の世代では難消化性デキストリンを余分にくわえて、やってみるとか…。」
これは飼育していた23匹が、蛹になるまで出したふんの一部。
本当はもっと、もっとあるとか…。
色が違うフン。
薄層クロマトグラフィーで(色素の?)分析するのだそうで…。
いい肥料になるので、いらなくなったらいつでも畑にどうぞ…。(笑)
下は自宅に持ち帰ったという5つの繭。
色素入りのエサを食べたものは、マユにも色が…。
下は、羽化した成虫。
家畜化された昆虫というと、セイヨウミツバチ、コオロギなどが思い浮かぶけれど、自然回帰能力は保っていて、自然界に戻されても生きていける。
その意味では、カイコ(家蚕)は、家畜化が進み、生態のすべてをヒトがコントロール。
ついては、繭糸を採るためだけに飼育され、利用される命(種)。
(繭糸を採った後、繭の中の蛹は、粉末にして釣餌にしたり、一部はヒトの食用にも…。
活動の中で、ビン詰めされた蛹をお見せしたことがある。)
カイコは、人類が家畜化した最初の昆虫。 
野生のものはおらず、自然界では種としては生きていけないほどまで体が変化。
自然回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物…。
成虫になっても翅があっても体が大きいのではばたけても飛べずによたよた歩くだけ。
自然界のクワの葉に乗せても、足が弱く落ちてしまう、白いから目立つので、すぐトリなどに食べられてしまうそうで…。
成虫も口吻はあるけれど、餌を食べることはない。
交尾後、やや扁平で丸い卵を300粒産み、約10日で斃死(へいし:衰弱して突然死んでしまうこと)する。

このカイコの悲しい?生態を知ったSママがつぶやいたのは、以下の言葉…。
「この子の幸せは??」
確かに、我々ヒトの生態の視点…から考えると、羽化(成人)してからは、10日ばかりで飲めず食えず。
生殖活動だけをして、衰弱して死んでしまう。
他にもカゲロウなど、成虫になってから水も食べ物も摂取しない昆虫はいるけれど…。
体に備わった翅で広い世界を羽ばたくこともできない。
まだこの個体は幸運にも羽化できたけれど、絹糸を採るためには、繭の中の蛹は羽化する前に殺してしまわねばならない。
繭の中で羽化したカイコは、繭から出るために、口から眉(シルク)を溶かす液体を出して出てくるというから、その前に、中のカイコの繭を殺してしまわなくてはならない。
茹でるか、冷凍するか…。

人類は、自然界の生き物を様々に加工し、自分たちの都合の良いように姿をかえさせて利用し、繁栄している。
イヌネコを始めとし、様々な家畜や作物はほとんどすべて、ヒトの手で姿かたちを変えられている。
例えばお米やコムギだって、収穫が楽な様に、穂から実(米粒、麦)が散らない種類を選抜して栽培。
だから、これらの種は、繁殖はヒトの手を借りなくてはならず、自然界での繁殖は難しい。

いま世界で「アニマルウェルフェア」が言われるようになってきた。
農林水産省のHPでは
我が国も加盟しており、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関である国際獣疫事務局(OIE)の勧告において、「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されています。
アニマルウェルフェアについては、家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながることから、農林水産省としては、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の飼養管理の普及に努めています
…んん、難しい。

採卵用のニワトリをケージでなく平飼いをして動けるようにしたり、ウシが運動できるように放し飼いにしたりする飼育方法の考え方。

「アニマルウェルフェア」を理解するための「5つの自由」というのを見ると…。 
 ① 飢え、渇き及び栄養不良からの自由
 ② 恐怖及び苦悩からの自由
   ③ 物理的及び熱の不快からの自由
   ④ 苦痛、傷害及び疾病からの自由
   ⑤ 通常の行動様式を発現する自由 

そもそもこの考え方は欧州で始まったものだから、対象が哺乳類やニワトリで、昆虫に対しては…当てはまるかはわからない。
関係するとすれば、ニワトリやウシが動き回れるようにする③と⑤かと…。
そもそもカイコのように生き物の姿かたちのみならず、
本来持っていた生態の「通常の行動様式」自体、既に人為的に変えてしまった生き物は、どうなるのだろう。
いずれにせよ、「ヒトは果てしない欲望で、世界の環境も、生き物も変えていく」
…なんて、シルクのネクタイ締めるときに思い出しそう…ではある。

〈おまけ:カイコのたまご〉
これは、お譲りいただく予定のカイコのたまご。
はてさて、うまく孵化して育てることができるだろうか?
[産卵行動をする親]
[親が孵化した後の繭に産み付けられた卵]
これらは孵化させる時期の調整のため、冷蔵庫にて保管中。

〈おまけ:カイコの蛹の佃煮〉
これは1年半前の活動でお話した「昆虫食」でサンプルとして紹介したもの。
イナゴは、希望者に試食してもらったけれど、こちらはビンを見せただけ…
中を見せるとちょっとハードルが高いかな?…と思ったのでビンを見せただけにしたもの。
カイコの蛹は乾燥させてあって軽い。
個人的には、イナゴは大好物だけれど、カイコはちと・・・私には、脂っこくて。
ヒトの、限りなき欲望(食欲!)
文章:赤字部分:JSさん、黒字:小池常雄
写真:JSさん(ママ)、ASさん(中2、女性)、小池(佃煮のみ)
ブログ編集:小池常雄

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