カイボリで帰ってきたのは?
[ガマの穂で羽を休める チョウトンボ:抽水植物がある池沼の環境を好む。都絶滅危惧Ⅱ類] |
カイボリを数度繰り返した井の頭池は水質が改善したり、新たな個性がある環境が復活したりすることで、いろいろな生物が帰ってきたり、増えたり…。
さまざまな昆虫たちが帰ってきたのは、岸辺のエコトーンを整備した影響も大きいとか…。井の頭池ではほとんどなかった湿地や水辺のエコトーンを何カ所か復元したけれど…。
それでも池岸の(長さの?)9%ほどとの事。
見せていただいた絵ではもっと少ないように見えるけれど…。
この場所は、ガマが繁茂しすぎたので、1週間前に伐採したばかりだそう…。
おかげで、絶滅したと思われていたコガマの沈埋(埋没)種子が芽吹いたのだそうだけれど、3種のガマ(ガマ、ヒメガマ、コガマ)の内、水深によって棲み分けている2種が強いので、時々助けてやる必要があるのだそうで…。
ガマはこの部分が全部かっ色、ヒメガマは緑色の部分がある。
コガマもガマと同じようにこの部分はかっ色をしていて全体に小ぶり。
7月ころにはこの柄の部分には雄花(おばな)の集まりがついていたところ。
7月ころにはこの柄の部分には雄花(おばな)の集まりがついていたところ。
雄花というか、黄色い花粉が付いていた場所。
ガマは私も自宅前の水槽で育てているけれど、雄花雌花が一本の軸の上下につく。
短い時間で散ってしまうので、印象がない人が多い。
池の北東端、橋のたもとの北側場所は、かいぼりの際、イベント的に一般の参加者で整備したのだそう。
岸に生えている柳の木は変わらないのでこの場所の改修したときの姿がわかる。
水深が戻っても、繊維のネット上の物はわかる。
これは2020年に初めて確認されたナガエミクリ。
ボンボンのような花に、ひし形の実がなる。
やはり浅場の環境が整えられたことで様々に復活を遂げたジョウロウスゲやサジオモダカなども生息域を拡大中。
岸にガマが増えたことによりカイツブリの営巣場所が増えたそう。
七井橋の脇にあるヒメガマは沈埋種子?から復活し、成長。
年々、沢山のつがいが営巣するようになり…。
カヤなどの抽水植物も様々復活。
改修時の写真を見せていただいたけれど…
急深(岸の近くでも水深1mほど)だったところを、苦労してエコトーンをつくったことが良くわかる。説明で示されたカイツブリの営巣場所と、営巣数の変化の資料は下記。
カイボリによる改修以降、カイツブリにとって営巣に適した場所が増え、彼らの選択幅がひろがり、結果として繁殖しやすくなっているということか。
潜水がとても得意なカイツブリ。
よく見ると左側のヒナはお母さんに「ねえねえ、オンブして!」とねだっているように見え…。「あなたはもう大きいんだから…」と、母鳥が言ったか言わないかは、…不明。
ギンヤンマがおつながりで産卵中。
井の頭池は大正時代の写真が残っているので、昔は池の中央部にも浅いところがあり、ガマが生えていたらしい…との事。
その後、浚渫(しゅんせつ:底の土や泥を除去する事)され、等しく深くしてしまって現在に至るようだけれど、時間と共に然に対しての知見も変わるし、人々がこの場所に望む・期待するものも変わっていく…。
説明してくださったNPOのSさんは、「池全体が今回改修した場所のような抽水や湿性のエリアになるといい…」というコメントを口にしておられたけれど、私は少し考えが違う。
確かに今回復活したり増えたりしたような昆虫や植物はこういう環境の復活によるもの。
広い池だからもっとあっていいとも思う。
でも一般の人にとっては、こういう環境はぐじゅぐじゅして岸から水面が遠くなり、あまり好ましく思われないのではないか?
たばこの吸い殻が岸近くに投げ込んであるのを見た。
この環境・動植物の意味が理解できてこそ、一般の人にも好ましく思う気持ちも生まれよう。
生物多様性の3つの要素(種・種内・環境)の一つが「環境の多様性」。
この場所の環境が多様性に富み、豊かになると、生物多様性はもっと増す。
でも一般の人にはやはり水面が近くにあって、デートで乗ったハクチョウボートであちこち行けて、移入種のコイにエサを与えられるような普通の公園の池としてイメージするものが受けるだろう。
すぐ近傍に住む義姉が、カイボリの期間がとても長く、「作業期間は散歩していてもネットに囲われていて嫌で嫌で…」と言っていたのが、このブログを読んでくれ「カイボリ後の水が綺麗になったは、ボランティアさんたちのおかげなのね?!」とつぶやいていたけれど…。
今回見学させていただいたカイボリの効果、エコトーンの意味と影響、3つの生物多様性の意味をもっと、もっと般の人が理解するようになると、反応が変わってくるのかもしれない…と思った次第。
《追記:ボランティア団体の位置づけ》
ボランティア団体と、管理者の東京都との関係が当日の説明では良くわからなかったので、「環境NPO生態工房」ご担当S氏に質問したところ、以下のような丁寧なお返事を頂きました。( )内は小池が補筆。
「公園管理者である都がボランティアを公募し、
ボランティア活動の運営などを環境NPOの「生態工房」に委託しています。
委託(業務)の範囲はボラ(ンティア組織の)運営のみではなく、イベント開催、調査や作業なども含まれます。
これらを「生態工房」が企画、運営し、ボランティアと一緒に行うことになっています。
先のガイドツアーのように、運営者である生態工房が進行したり、班を受け持ったりする場面もありますが、できるだけ主役であるボランティアに前面に出てもらい、生態工房は裏方になるのが基本です。
例えば取材を受けるときとかも…。
この日は都職員はザリガニ班に加わっていたので不在でしたが、普段はガイドツアーにも入っています。
発注者(監督員)・受託者・ボランティアの三者がいて、契約的なことを言えば一般的には上下や強弱の関係がありそうですが、
この事業は協働を標榜していて、並列的な関係性で進んでいるのが特長です。」
…との事。
(私小池は、組織設計事務所勤務時代に)行政の仕事をたくさんしたけれど、
なかなか並列的な立場などにはなりにくく。
担当者や役割にもよるけれど…。
またお邪魔したくなりました。
文章:小池常雄
写真: 同
上記の記載内の資料や写真は説明会の中で
「環境NPO生態工房」担当S氏より説明された資料
(資料の転載・紹介は先方に了解済)
撮影地:井の頭公園
撮影日:20220820
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